専攻別の教育

専門によってイメージがわかれる理由としては、もともと似たような人が同じ科に集まる傾向があることが考えられます。それだけではなく、ただでさえ似たような人たちが、専門を選んだ後に似た教育を受けることにも理由があるでしょう。こちらも外科を例として説明してみます。研修を始めた頃、上司の外科医と次のような会話をしました。上司「外科医には二つの返事しかない。それが何かわかるか」 、私「いえ、わかりません」、上司「 イエスか、はい、の二択だ」 、私「え、そうなんですか」、上司「いや、だから、イエスか、はい、しかないと言っているだろう」 という冗談のようなこのやりとりですが、ほかの病院の外科医も同じことを言われたと聞いています。つまりこれが外科医の教育なのです。これは「外科医というものは、若いうちはとにかく上司の言うことを聞き、言われたことだけを疑わずにやれ」という意味なのです。たしかに外科という科は、手術をしますから、患者さんに傷をつけて治療を行うところです。ちょっと間違えてしまった、で命が奪われるという特殊性がありますから、その教育方針はあながち間違ってはいないでしょう。そして、このほかにも、外科医は手術という特殊技能を覚えねばなりません。これは、教科書や、ビデオを観ただけでは絶対に習得できません。手術ができるようになるためには、厳しい外科医とタッグを組んで、厳しい罵声を浴びながらのマンツーマンでの指導がなければなりません。一子相伝と言ってもいいかもしれません。そのためには、厳然たる上下関係が必要です。上司が「こう切れ」と指示を出しているのに、「いや、僕はこう切ったほうがいいと思います」と意見を言う若手には、危険すぎて手術を執刀せることができないのです。ですから、外科医の世界はどの医局、どの病院でもたいてい厳しい上下関係があります。